
ラフォーレと私雨と、生き物の気配と。
ラフォーレと私雨と、生き物の気配と。
雲が刻々と流れていきます。風が体を包むように流れていきます。
標高300mの山の上にあるラフォーレリゾート修善寺は、効率的であること、便利であることとはおよそ対極にある、ありのままの自然の一部として、森の中に佇んでいます。
「この風を浴びていたい」「雨上がりの天城連山を見てほしい」。 従業員の大重徹さんと島﨑香菜子さんに話を伺うと、そこにいるからこそ感じることができる、
自然の存在が見えてきました。
3歳から修善寺に住んでいて、小学生の頃は季節限定で開いていたスケートリンクに遊びにきていました。高校生の時にゴルフ場のキャディのアルバイトを始めたのが、今の仕事のきっかけです。フロント勤務を経て、現在は宿泊課で客室清掃の管理業務などを担当しています
幼い頃から来ていたものの、仕事をしてみて初めて、山の上にこんなに広いところがあったんだと驚きました。一般的なイメージでは、ホテルは高層ビルで一つの建物です。レストランや大浴場などの施設は一つの建物の中で完結しています。でもラフォーレリゾート修善寺は山の中に施設が点在しています。何をするにも移動が必要かもしれませんが、歩きながらはっきりとした四季を感じることができます。春になるとお花見ができるソメイヨシノの桜並木もありますが、地元の方にもそこまで知られていないようです。穴場かもしれませんね
そうですね。それこそ清掃のスタッフは、雨が降っても雪が降っても台風が来ても、お客様がチェックアウトされるまで外で待機をすることになります。でもその時に感じる風は、屋内で感じるエアコンの風とは全く違うな、と思います。この風を浴びていたいなぁ、と思うんです。業務中ですが、風を感じて時々ふっと仕事モードがオフになる時があって、それは山の上の森の中での仕事のいいところなのかなと思っています
そうですね。お客様は驚かれますが、よく見る光景です。狸やハクビシンもいますよ
出会う方法はわかりませんが…、コテージの近くに鹿がよく通る道があります。それに、よく聞いてみると、あちこちで物音がしているんです。夕方や朝、施設から車に戻る時に鹿の「キーン」という鳴き声や、ガサガサッという林の中を歩いている音が聞こえてきます。ですから、車や電車などの都会的ではない、つくられていない音に耳を澄ましてみると、動物に出会う確率が高くなるかもしれません
私は毎朝出勤前に近くの滝に立ち寄るようにしています。その時間は完全に頭をオフにして、コーヒーを飲みながら、無心になるんです。前日よりも滝の水量が増えているのを見て、昨日は雨が降ったんだな、なんて考えたりしています。都会から来られる方は、仕事に関わるいろいろなことをシャットダウンして、意識的に考えなくするといいかもしれませんね。せっかくリゾートにいるのですから
大重 徹 おおしげ とおる/
ラフォーレリゾート修善寺宿泊課。静岡県河津町出身。
大学のインターンシップ制度で1ヶ月間働かせてもらったのがご縁です。元々サービス業に就きたいという思いがあって、その中でも、ゆっくりとお客様とお話ができるリゾートホテルのレストランという職場がいいなと思いました
お子様連れですとか、お年寄りの方ですとか、スーツを着てバリバリ仕事をするというのではなく、のんびりしに来られている方が多いですね。そういった方とお話できるのが自分には合っていると感じています
静かな伊豆の方が性格的に合っているのかなとは思います。それとここは水がきれいなんです。料理人の方に水が違うと教えてもらって、大阪にいた時は気が付かなかった白米のおいしさに気が付きました。それから、水のおかげか肌の調子もよくなったんです。学生時代のインターンを終えた後、大阪に戻ったら肌が荒れてしまって。就職が決まってこちらに来てしばらくすると、何もしていないのに肌がきれいになりました
11月下旬、赤、黄、緑とグラデーションに紅葉するモミジの木があります。街中からリゾートに上がってくる山道の途中にあって、特別に大きいわけではないのですが、存在感のある木です。以前、長期で宿泊されていたお客様にお伝えしたところ、朝食後に散歩がてら見に行って下さって、すごいきれいですね、とその木のことで盛り上がりました
レストランからの天城連山ですね。晴れの日にきれいに見渡せるのは当然ですけど、雨上がりが特に幻想的で綺麗なんです。全体が霧がかかっているんじゃなくて、所々、晴れ間がさしていて、なんとも言えない光景です。せっかく旅行に来たのに、雨が降っていたら残念な気持ちになる方もいると思うのですが、朝食の時にお話しするタイミングがあると、ここからの景色がすごいきれいなんですよ、とお伝えしています。雨の日でもリゾートで楽しんでもらいたいなと思っています
リピーターの方はよく「忙しかったから休みに来たよ」と仰います。山紫水明という温泉がついたお部屋があるのですが、ビルなど遮るものは何もなく、遠くに富士山が見えます。夜は星もきれいです。観光するというよりも、ゆっくりしに来られるようですね
そうですね。何も考えないことですかね。何も考えないからこそ感じられることがあると思います
島﨑 香菜子 しまざき かなこ/
ラフォーレリゾート修善寺料飲課。大阪府摂津市出身。
修善寺を訪れてからひと月ほど。今も印象に残るのは、島崎さんのお話の中で出てきた常連のお客さんのことだ。繰り返し同じ場所を訪れる常連客の楽しみとは何なのだろうか。二週間ほど滞在する人もいるという。一度来ただけでは満足できない、何度も来たくなるのはなぜなのだろうか。
島崎さんに聞くと、常連の方は観光に来るというよりは、やすみに来るらしいということだった。「温泉に入ったり、富士山を見たりしているようです」。そう教えてくれたが、それなら温泉や富士山の眺めの何が他と違うのか、せっかくなら利用者の目線で直接話を聞きたいと思った。滞在中、温泉などで一緒になることがあったら聞いてみようと思っていたが、結局その機会には恵まれなかった。
撮影も思い通りにはいかなかった。車の前に突然鹿の群れ現れたまでは良かったが、カメラに手を伸ばした隙に跳ねていなくなってしまった。山の変わりやすい天気にも翻弄された。止んで欲しいと願っても雨が止むことはなかったし、どうせなら、と思い切り降って欲しいと気持ちを切り替えたところで厚い曇り空からは小雨が落ちてくるだけだった。規則正しくリゾートを巡回するシャトルバスだけが、こちらの計画に寄り添ってくれた。
頼まれてもいないのに取材の裏側を紹介したのは、相手が自然だからしょうがない、という言い訳をしたかったからだ。季節が移り変わり、すでに遠い昔のことのように感じられる修善寺での夏の数日を振り返っていると、ふと、何度も同じところに足を運ぶのは、相手が自然だからだ、という答えに妙な確信を得た。いつ来ても違う景色を見せてくれる。一度来たからと言って、その場を制覇した気になるような記念写真はなかなか撮れない。多分ここは一枚写真を撮って満足できるような場所ではないのだ。
朝方、人気のないゴルフコースを二頭の鹿が悠然と散歩している。そんな写真が撮れたらと想像する自分がいる。日々、どころではない、刻一刻と移り変わる目の前の風景を感じるために、ここに来て、ここで休んでいく人がいるのだと思う。
撮影で使用した「山紫水明」は、ラフォーレリゾート修善寺の敷地内に独立して佇む客室棟。和の空間で、全室温泉露天風付き、修善寺の良質な温泉と富士山の雄大な眺望を心ゆくままに堪能できます。映像にも収められているテラスから眺めるありのままの自然、音、風をぜひ感じてみてください。
大重 徹さん
大重 徹さん
ラフォーレ修善寺に向かう山道
朝日に輝く修善寺の森
木々に囲まれた客室
木々に囲まれた客室
旭滝。「仕事前に来て無心になるんです」
大重さんがよく行くというもう一つのスポット。達磨山。富士山と駿河湾を眺められる。
島﨑 香菜子さん
解放感あふれるゲストハウスのエントランス
駿河湾の幸が楽しめるランチメニュー
美味しい湧き水で知られる水神社
水神社。湧き出たばかりの水がワサビ田に流れる
ラフォーレリゾート修善寺に向かう山道
天気の移り変わりの激しい空
雨の日に使う緑色の傘
山紫水明のテラスから
田園風景が広がる修善寺
旭滝。脱皮したばかりのサワガニを見つけた
雨の日に借りられる緑色の傘
道路沿いの木々で巣を作っていたクモ
リゾート内を循環するバスから
発達する積乱雲が遠くに見えた
生い茂る木々に囲まれた客室 「山紫水明」
リゾート内を循環するバスから
朝日に輝くラフォーレリゾート修善寺に向かう山道
旭滝で見つけたセミの抜け殻
温泉露天風呂付きの客室「山紫水明」
木々に囲まれた客室
温泉露天風呂付きの客室「山紫水明」